「自己破産の手続きが始まったら、海外旅行や海外出張には行けなくなるの?」

「持っているパスポートも、没収されたり失効したりしてしまうのだろうか?」

自己破産を検討するにあたり、仕事やプライベートでの海外渡航に制限がかかるのではないかと心配される方は少なくありません。グローバル化が進む現代において、移動の自由が制限されるのは大きな不安要素です。

結論から言いますと、手続きの種類によりますが、多くの場合(同時廃止事件)は海外旅行に全く制限はありません。また、自己破産を理由にパスポートが没収されたり、申請・更新ができなくなったりすることも一切ありません。

この記事では、自己破産と海外旅行・パスポートの関係について、どのような場合に制限がかかり、その制限はどのような内容なのか、そしてどうすれば海外渡航が可能になるのかを、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。

【まず結論】パスポートが没収・失効することはない

最初に最も重要な点として、自己破産をしたこと自体を理由に、すでにお持ちのパスポートが没収されたり、その効力が失われたりすることはありません。

また、手続き中や手続き後であっても、新たにパスポートを申請したり、有効期限が来たものを更新したりすることも全く問題なく可能です。パスポートの発給を制限されるのは、旅券法で定められた特定の刑事罰を受けた場合などに限られており、自己破産はそれに該当しないからです。

海外旅行の制限は「管財事件」の手続き中のみ

海外旅行に行けるかどうかは、あなたの自己破産手続きが「同時廃止事件」と「管財事件」のどちらになるかによって、扱いが明確に分かれます。

① 同時廃止事件の場合 → 制限は一切なし

申立人に配当すべき財産がほとんどなく、手続きが簡易に進む「同時廃止事件」の場合、海外旅行や国内旅行に関する法的な制限は一切ありません。手続き中であっても、基本的には自由に海外へ渡航することが可能です。(ただし、裁判所からの連絡に対応できるよう、事前に代理人弁護士には一報を入れておくのがマナーです。)

② 管財事件の場合 → 裁判所の「許可」が必要

一定以上の財産がある、あるいは借金の原因調査が必要などの理由で、破産管財人が選任される「管財事件」となった場合、破産法に基づき、あなたは「居住地を離れること」について裁判所の許可を得る義務が生じます。これを「居住制限義務」と呼びます。

これは、あなたが財産を隠したり、海外へ逃亡したりするのを防ぐためではなく、破産管財人との面談や財産調査にいつでも協力できる状態を保つためのものです。したがって、海外旅行や長期の出張、引越しなども、この制限の対象となります。

管財事件中に海外旅行に行くための手続き

「管財事件になったら、もう海外には行けないのか」というと、そうではありません。正当な理由があり、適切な手続きを踏めば、裁判所から許可を得て海外へ渡航することは可能です。

【許可を得るための流れ】

  1. 代理人弁護士に相談する:まず、渡航の目的、期間、行き先、連絡先などを担当の弁護士に伝えます。
  2. 弁護士が裁判所に許可を申し立てる:弁護士が「居住地離脱許可申立書」を作成し、裁判所に提出します。
  3. 裁判所が許可を判断する:裁判官は、渡航の必要性や、手続きへの支障がないかなどを考慮して、許可するかどうかを決定します。

仕事上の海外出張や、親族の冠婚葬祭といった必要性の高い理由であれば、許可は得やすい傾向にあります。娯楽目的の旅行であっても、手続きに支障がないと判断されれば許可される可能性は十分にあります。重要なのは、無断で渡航するのではなく、必ず事前に弁護士を通じて裁判所の許可を得ることです。

免責許可決定後は、完全に自由

管財事件で課せられた移動の制限は、あくまで手続き中の「一時的」なものです。無事に免責許可決定が確定し、すべての手続きが完了すれば、居住制限義務はなくなり、あなたは誰の許可も得ることなく、完全に自由に海外旅行や引越しをすることができます。


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