「生活が苦しく、親からお金を借りている…」
「親にだけは迷惑をかけられないから、自己破産の前に、親からの借金だけでも返しておきたい」
借金の返済に困窮したとき、最後の頼みの綱としてご両親やご親族からお金を借りる方は少なくありません。そして、自己破産を決意した際、他の金融機関はともかく、善意で助けてくれた親にだけは返済したいと考えるのは、人として当然の感情です。
しかし、そのお気持ちは痛いほど分かりますが、自己破産の手続きにおいて、親族だからといって優先的に返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」という重大な禁止行為にあたり、あなたの自己破産そのものを失敗させる原因となりかねません。
この記事では、親子間の借金が自己破産でどのように扱われるのか、そして「援助」との違い、良かれと思ってした行為が招く深刻なリスクについて、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
【大原則】親・子供も、法律上は「債権者」
たとえ親子間のお金の貸し借りであっても、返済の約束がある以上、法律上、親は消費者金融やカード会社と何ら変わりのない「債権者」となります。
そして、自己破産の手続きには「債権者平等の原則」という、すべての債権者を平等に扱わなければならないというルールがあります。この原則に基づき、あなたは、親からの借金も他の借金と同様に、すべて「債権者一覧表」に記載して裁判所に申告する義務があるのです。「親だから」という個人的な感情で、扱いを変えることは許されません。
最も注意すべき「偏頗弁済(へんぱべんさい)」のリスク
「偏頗弁済」とは、債権者平等の原則に反し、特定の債権者にだけ優先して返済を行う行為を指します。自己破産を決意した後に、親にだけ借金を返済する行為は、この典型例です。
この偏頗弁済が発覚した場合、以下のような深刻な事態を招きます。
① 免責不許可となる(借金がゼロにならない)
偏頗弁済は、悪質な行為として「免責不許可事由」に定められています。これが原因で、裁判所から借金の免除が認められず、手続きにかけた時間も費用もすべて無駄になってしまう可能性があります。
② 破産管財人によって、返済したお金が取り戻される(否認権の行使)
手続きが管財事件となった場合、破産管財人は、あなたが親に返済したお金を「破産財団(債権者への配当原資)に戻しなさい」と、親に対して返還を求めることができます。これを「否認権の行使」と呼びます。良かれと思ってした返済が、かえって親を法的なトラブルに巻き込み、精神的にも経済的にも、より大きな負担を強いる結果となるのです。
親からの「援助(贈与)」であれば問題ない
一方で、親から受け取ったお金が、返済を前提としない純粋な「援助(贈与)」であれば、それは借金ではありません。したがって、親は債権者ではなく、自己破産の手続きに何ら関係はありません。
「借金」か「援助」かの判断は、契約書の有無だけでなく、これまでの返済実績や、お金が渡された際の状況などを基に、客観的に判断されます。自己判断で「これは援助だった」と決めつけず、必ず弁護士に正直に事情を話してください。
重要:親が自己破産の「費用」を援助してくれるのは問題ない
ここで非常に重要な点があります。親が、あなたの過去の「借金」を返済するのではなく、これから始まる自己破産手続きのための「弁護士費用」や「裁判費用(予納金)」を支払ってくれることは、全く問題ありません。
これは、特定の債権者を利する行為ではなく、あなたが人生を再スタートするための手続きを円滑に進めるための援助だからです。他の債権者の不利益にはならないため、偏頗弁済にはあたらないのです。実際に、ご両親が費用を援助されるケースは非常に多くあります。
親子間のお金の問題は、法律論だけでなく、感情も絡む非常にデリケートな問題です。ご自身の判断で行動する前に、必ず弁護士にご相談ください。
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①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの破産・債務整理案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、ギャンブルや浪費が原因の借金等の困難事情でも最適な解決策をご提案します。
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