「自己破産では、生活に必要な最低限の財産は『自由財産』として手元に残せる」
「でも、どうしても手放したくない財産が、その基準額(99万円の現金や20万円の資産価値)を超えてしまう…」
通勤に必須の自動車、持病があって解約できない生命保険、子どものための学資保険など、たとえ法的な基準額を超えてしまっても、生活再建のためにどうしても手元に残したい財産がある、という方は少なくありません。そのような場合、諦めるしかないのでしょうか。
いいえ、諦める必要はありません。そのような場合に、裁判所に特別な事情を認めてもらい、本来は処分対象となる財産を手元に残すための法的な手続きが「自由財産の拡張」です。
この記事では、この専門的ながらも非常に重要な「自由財産の拡張」という制度について、どのような場合に利用できるのか、裁判所は何を基準に判断するのかを、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
「自由財産の拡張」とはどんな制度?
自由財産の拡張とは、破産法で定められた本来の自由財産(99万円以下の現金、差押禁止財産など)だけでは、破産者の生活維持や経済的更生に著しい支障が出ると認められる場合に、申立てによって、裁判所の判断で自由財産の範囲を広げてもらう制度です。
これは自動的に認められる権利ではなく、破産者が「この財産が、今後の生活再建になぜ必要なのか」を具体的に主張し、裁判所に納得してもらう必要があります。この手続きは、破産管財人が選任される「管財事件」において行われます。
自由財産の拡張が認められやすい財産の例
どのような財産であれば、拡張が認められる可能性があるのでしょうか。典型的なケースは以下の通りです。
自動車・バイク
査定額が20万円を超えていても、以下のようなやむを得ない事情がある場合に認められる可能性があります。
- 公共交通機関が乏しい地域に住んでおり、通勤に不可欠である
- 家族の通院や介護のために、日常的に利用する必要がある
- 事業(自営業など)で使うために必須である
生命保険・学資保険
解約返戻金が20万円を超えていても、解約することが破産者の更生を妨げるような場合に検討されます。
- 破産者本人や家族に持病があり、一度解約すると健康上の理由で新たな保険に加入できない
- 子どもの進学時期が間近に迫っており、学資保険を解約すると学費の支払いが困難になる
預貯金
個別の口座残高が20万円を超えている場合でも、近々支払いが確定している大きな支出(家賃の更新費用、子どもの入学金など)の原資として、一定額の拡張が認められることがあります。
退職金
退職が間近に迫っており、退職金が老後の生活を支える唯一の頼りである、といった事情がある場合に、差押え対象となる金額の一部について拡張が認められる可能性があります。
裁判所が拡張を判断する際の考慮要素
裁判所は、申立てがあれば何でも許可するわけではありません。破産法に基づき、以下の要素を総合的に考慮して、拡張を認めるべきかどうかを慎重に判断します。
- 破産者の生活の状況(家族構成、健康状態、地域の交通事情など)
- その財産の種類、金額、そしてなぜ手元に残す必要があるのかという理由
- 破産者が今後、収入を得ていく見込み(その財産が収入確保にどう影響するか)
- その他の事情(破産に至った経緯、債権者の意見など)
これらの要素を、説得力のある申立書と証拠資料によって、裁判官と破産管財人に理解してもらう必要があります。
自由財産の拡張に弁護士が不可欠な理由
自由財産の拡張は、非常に専門的な手続きであり、法律知識のない方がご自身で行うのは極めて困難です。弁護士にご依頼いただくことで、以下のような強力なサポートが可能になります。
- 的確な法的構成:あなたの状況が、上記の考慮要素にどう当てはまるのかを法的に構成し、説得力のある主張を組み立てます。
- 専門的な申立書の作成:裁判所の書式に従い、あなたの主張を裏付ける証拠(診断書、勤務先の証明書など)を添付した、質の高い申立書を作成します。
- 破産管財人との交渉:裁判所の判断に大きな影響を与える破産管財人に対し、事前に事情を説明し、拡張の必要性について理解を求める交渉を行います。
大切な財産を守り、万全の体制で生活を再建するためにも、財産に関するご不安は、必ず弁護士にご相談ください。
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