「自己破産をしたら、家も車も貯金も、身の回りのものすべてを取り上げられて無一文になってしまう…」
自己破産を考えたとき、多くの方が抱く最も大きな恐怖が、この「財産の没収」に関するものではないでしょうか。しかし、映画やドラマで描かれるような、家財道具に赤い差し押さえの札が貼られていく…といった光景は、現実の自己破産とは大きく異なります。
ご安心ください。自己破産は、申立人の生活再建を目的とした制度です。そのため、今後の生活に必要な最低限の財産は「自由財産」として、法律で手元に残すことが認められています。
この記事では、どのような財産が処分の対象となり、どのような財産が「自由財産」として守られるのか、その具体的な基準を税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
自己破産における財産処分の基本ルール
自己破産の手続きでは、申立人の財産のうち、高価なものを裁判所の監督下でお金に換え(換価)、それを債権者に公平に分配(配当)します。この、換価・配当の対象となる財産の集まりを「破産財団」と呼びます。
一方で、法律は、申立人の今後の生活や更生のために、すべての財産を取り上げることを禁じています。この、破産財団に含めず、手元に残すことが認められている財産が「自由財産」です。
手元に残せる「自由財産」の具体的な中身
では、具体的に何が「自由財産」として守られるのでしょうか。自由財産は、大きく分けて以下の4種類があります。
① 99万円以下の現金
自己破産の手続きが始まった時点(破産手続開始決定時)で、あなたが所持している99万円以下の「現金(キャッシュ)」は、原則としてすべて手元に残すことができます。これは、手続き後の当面の生活費として法律で認められているものです。
② 差押禁止財産
民事執行法という法律で、生活に不可欠なものとして差押えが禁止されている財産です。自己破産においても、これらは自由財産として扱われます。
- 生活に必要な衣服、寝具、家具、家電製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)
- 1ヶ月分の食料や燃料
- 公的年金(国民年金・厚生年金)や生活保護の受給権
- 仕事に不可欠な器具(ただし高価なものを除く)
③ 手続き開始「後」に得た財産(新得財産)
裁判所から「破産手続開始決定」が出された後に、あなたの労働によって得た給料や賞与、あるいは親族からの援助などで得た財産は「新得財産」と呼ばれ、すべてあなたのものです。処分の対象にはなりません。
④ 各地の裁判所の運用で自由財産として認められるもの
上記の法定されたもの以外にも、多くの裁判所では、以下の財産について、その価値が「20万円以下」であれば、個別の財産として自由財産と認める運用をしています(20万円ルール)。
- 預貯金:個別の銀行口座の残高が20万円以下
- 生命保険:解約返戻金の見込額が20万円以下
- 自動車:査定額(時価)が20万円以下
- 退職金:支給見込額の8分の1(退職済みの場合は4分の1)が20万円以下
原則として没収(換価処分)の対象となる財産
上記に対し、以下の財産は原則として処分の対象となり、破産管財人によってお金に換えられ、債権者への配当に充てられます。
- 不動産(土地・家・マンション)
- 価値が20万円を超える自動車
- 価値が20万円を超える預貯金、生命保険、退職金など(原則として20万円を超える部分)
- 株式、投資信託、ゴルフ会員権などの有価証券
- 高価な貴金属、美術品など
これらの財産がある場合、手続きは「管財事件」となります。ただし、住宅ローンが残っている不動産などは、財産価値がほとんどない(オーバーローン)と判断され、処分されないケースもあります。
まとめ:財産のことで悩んだら、まず弁護士へ
「この財産は残せるだろうか」「どう判断されるか分からない」といった財産に関する問題は、自己破産における最も専門的な分野の一つです。自己判断で財産を処分したり、名義を変更したりする行為は「財産隠し」と見なされ、免責が許可されない最悪の事態を招きます。
ご自身の状況で、どの財産が守られ、どの財産が処分の対象となるのか。正確な見通しを知るためにも、まずは正直にすべての財産状況を弁護士にお話しください。
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①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験
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