「自己破産をすると、裁判所の職員が家にやってきて、家具や家電に赤い差押えの札を貼っていく…」
「テレビも冷蔵庫も、身の回りのものが根こそぎ持っていかれるのでは?」
テレビドラマなどの影響から、自己破産に対してこのような「差押え」のイメージをお持ちの方は少なくありません。生活の基盤である家財道具をすべて失ってしまうのではないかという恐怖は、手続きへの大きなためらいに繋がります。
まず結論から申し上げますと、そのようなことはまずありません。自己破産をしても、あなたの生活に必要不可欠なほとんどの家財道具は「差押禁止財産」として法律で保護されており、手元に残すことができます。
この記事では、どのような家財道具が守られ、どのようなものが処分の対象となるのか、その具体的な基準と、誤解されがちな「差押え」の真実について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
【大原則】生活必需品は「差押禁止財産」として守られる
法律(民事執行法)では、個人の尊厳ある生活を保障するため、生活に欠くことができない財産の差押えを禁止しています。これを「差押禁止財産(差押禁止動産)」といい、自己破産の手続きにおいても、これらの財産は「自由財産」として手元に残すことが認められています。
具体的には、以下のようなものが該当します。
- 生活に欠かせない衣服、寝具、家具、台所用具、家電など
(例:ベッド、タンス、食卓セット、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、テレビ、エアコン、パソコンなど) - 1ヶ月分の食料や燃料
- 仕事に不可欠な道具(ただし高価なものを除く)
つまり、あなたの日常生活を支えているほとんどの家財道具は、処分の対象外となるのです。裁判所の職員が家にやってきて、家財道具一式を運び出す、ということは現実には起こりません。
処分の対象となる「価値のある家財道具」とは?
では、どのような場合に家財道具が処分の対象となるのでしょうか。それは、「生活必需品」の範囲を超え、「贅沢品・高価な資産」と見なされる場合です。
その判断基準として、多くの裁判所では「個別の品物の時価(現在の価値)が20万円を超えるかどうか」という「20万円ルール」が運用されています。購入時の価格ではなく、今売ったらいくらになるか、という中古市場での価値で判断されます。
処分の対象となる可能性のある家財道具の例
- 高価な貴金属・宝飾品:指輪、ネックレスなど
- 高級腕時計、ブランド品:ロレックスなどの高級時計や、高価なブランドバッグなど
- 美術品、骨董品、着物など:収集家的な価値のあるもの
- 99万円を超える現金
- 複数台所有するテレビやパソコン:生活必需品は1台と見なされ、2台目以降で価値の高いものは処分の対象となる可能性があります。
- 高価な楽器や趣味の道具:プロの演奏家が仕事で使う場合などを除き、ギターやピアノ、ゴルフセットなどは資産と見なされることがあります。
これらの高価な財産がある場合、手続きは破産管財人が選任される「管財事件」となり、管財人がその財産を売却してお金に換え、債権者への配当に充てることになります。
【Q&A】これはどうなる?具体的な家財道具の扱い
- Q. パソコンやスマートフォンは処分されますか?
- A. いいえ。現代社会において、パソコンやスマホは仕事探しや社会生活に不可欠なものと見なされるため、一般的な機種であればまず処分されません。
- Q. 子どもの学習机やピアノは大丈夫ですか?
- A. 学習机は生活必需品として扱われます。ピアノは、その価値によります。時価が20万円を超えない古いものであれば問題ありませんが、高価なグランドピアノなどは資産と見なされる可能性があります。
- Q. ペット(犬・猫など)はどうなりますか?
- A. 法律上、ペットは「財産(動産)」として扱われますが、換価・処分されることはありません。大切な家族の一員として、これまで通り一緒に暮らせますのでご安心ください。
ご自身が「価値があるのでは?」と心配しているものでも、実際の査定額は20万円に満たないケースがほとんどです。自己判断で処分したり隠したりせず、まずは正直に弁護士にご相談ください。
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