自動車税を滞納したまま自己破産できる?税金は免除されるのか弁護士が解説
借金の返済が苦しく自己破産を検討している方の中には、同時に「自動車税」や「住民税」などの税金も滞納してしまっているケースが少なくありません。
「自己破産すれば、借金も滞納した税金もすべてゼロになる」と期待されているかもしれませんが、残念ながらそうではありません。税金の滞納は、通常の借金(消費者金融やクレジットカード)とは法的な扱いが大きく異なります。
税金を滞納したまま自己破産をするとどうなるのか、自動車は手元に残せるのか、そして何より恐ろしい「差し押さえ」のリスクについて、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
結論:自己破産しても自動車税の滞納は免除されない
まず最も重要な結論から申し上げますと、自己破産をして裁判所から免責許可決定を得たとしても、滞納している自動車税(およびその他の税金、国民健康保険料、年金保険料など)の支払い義務は免除されません。
これらを法律用語で「非免責債権(ひめんせきさいけん)」と呼びます。
破産法の目的は、支払い不能に陥った債務者の経済的更生を助けることですが、税金は国や地方自治体が行政サービスを行うための根幹となるものです。そのため、個人の借金とは区別され、破産手続きをもってしても支払い義務が残り続けるのです。
自動車税を滞納し続ける最大のリスクは「差し押さえ」
「どうせ破産するし、税金も払えない」と滞納を放置し続けるのは非常に危険です。
貸金業者などの「一般債権者」が給与や財産を差し押さえるには、裁判(訴訟)を起こして判決を得るなどの法的手続きが必要です。しかし、税金を徴収する役所(都道府県税事務所や市町村)は、裁判所の判決がなくとも、法律(国税徴収法など)に基づいて迅速かつ強力な「滞納処分」を行うことができます。
具体的には、以下のような財産が差し押さえの対象となります。
- 給与(手取り額の一部)
- 銀行預金(口座ごと凍結・徴収される)
- 不動産
- そして、対象の「自動車」そのもの
特に給与や預金の差し押さえは、ある日突然実行されます。役所は差し押さえを待ってくれません。生活や仕事に重大な支障が出る前に、早急な対応が必要です。
自己破産が自動車税滞納の解決に「間接的に」役立つ理由
「税金が免除されないなら、自己破産する意味がない」と思われるかもしれませんが、それは誤解です。
もし、あなたの負債が「滞納した税金だけ」なのであれば、自己破産は解決策になりません。役所に分納(分割払い)の相談に行くべきです。
しかし、もし「消費者金融やカードローンなどの借金」と「滞納した税金」の両方で苦しんでいるのであれば、自己破産は非常に有効な解決策となります。
自己破産によって「一般の借金」の支払い義務が免除されれば、これまで借金の返済に充てていたお金が手元に残ります。その浮いた資金を、免除されない「滞納した税金」の支払いに充てることができるようになるのです。
弁護士に依頼し、破産申立ての準備に入ると、まず一般の債権者からの督促・返済はストップします。これにより家計に余裕が生まれるため、その間に役所と分納の交渉を進めやすくなるという大きなメリットがあります。
破産手続き中、自動車はどうなる?
自動車税を滞納しているかどうかに関わらず、自己破産手続きにおいて「自動車」がどう扱われるかは、主に以下の2点で決まります。
1. 自動車ローンが残っている場合
ローン返済中の自動車は、多くの場合、所有権がローン会社やディーラーにある「所有権留保」の状態です。自己破産をするとローンの返済もストップするため、ローン会社は契約に基づき自動車を引き揚げてしまいます。
この場合、自動車は手元に残りません。
2. 自動車ローンが残っていない(自己所有の)場合
ローンがない自動車はあなたの「財産」です。自己破産手続きでは、一定以上の価値がある財産は処分(換価)し、債権者への配当に充てる必要があります。
- 自動車の価値が低い場合(例:20万円以下)
「自由財産」として、手元に残せる可能性が高いです。 - 自動車の価値が高い場合(例:20万円超)
原則として破産管財人が選任される「管財事件」となり、自動車は売却・処分される可能性が高くなります。自動車を残せるケースもありますので、一度弁護士にご相談ください。
【税金滞納との関係】
ここで注意が必要なのは、たとえ自動車の価値が低く(20万円以下)破産手続き上は手元に残せるケースであっても、自動車税の滞納を理由に役所から「自動車そのもの」を差し押さえられてしまうリスクが残ることです。
役所による差し押さえが先か、破産手続きの開始が先か、非常に複雑な問題になるため、早急に弁護士に相談する必要があります。
自動車税滞納で破産を検討する際の注意点
税金の滞納と借金問題が重なっている場合、ご自身で判断するのは非常に困難です。
1. 差し押さえの前に弁護士に相談する
給与や口座が差し押さえられてからでは、生活の立て直しが困難になり職場にも迷惑をかけることから居づらくなります。弁護士に依頼すれば、まず一般の借金の督促を止め、家計を安定させる手助けができます。その上で、役所との交渉や破産申立てのタイミングを戦略的に進めます。
2. 財産隠しは絶対にしない
「自動車を差し押さえられたくない」「破産で取られたくない」と考え、破産申立ての直前に自動車の名義を家族や友人に変更する行為は、「財産隠し(否認対象行為)」とみなされます。
これが発覚すると、最悪の場合、破産そのものはできても借金が免除されない「免責不許可事由」に該当する可能性が極めて高く、手続きが台無しになります。
まとめ
自動車税などの税金は、自己破産をしても免除されません。しかし、税金を滞納し続けて差し押さえを受けるリスクは非常に高いです。
もし税金以外にも多額の借金があり返済が困難なのであれば、自己破産によってその借金を整理し、家計を立て直した上で、滞納している税金を(役所と交渉して)分割で支払っていくのが、最も現実的かつ早期の生活再建への道です。
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広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員


