「親族が経営する会社で働いているが、自己破産をしたら、会社や家族に迷惑がかかるのではないか…」
「普通の会社員とは違う、何か特別な問題が起きるのでは?」

ご家族が経営する会社にお勤めの方が自己破産を検討される際、借金問題そのものに加えて、職場である会社や、経営者であるご家族への影響を心配し、深い葛藤を抱えるケースは少なくありません。

結論として、自己破産はあくまで個人の手続きであり、あなたが単なる従業員として勤務しているだけであれば、会社や他の家族に直接的な法が及ぶことは原則としてありません。しかし、会社との間に特別な金銭の貸し借りがある場合などは、特に慎重な対応が求められます。

この記事では、家族経営の会社にお勤めの方が自己破産をする際の、特有の注意点や、会社・ご家族への影響について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。

従業員の自己破産で会社に影響しない通常のケース

まず、あなたが会社の経営者(役員)ではなく、一人の「従業員」という立場であれば、自己破産をしても、以下述べる注意ポイントに該当しない限りその事実が会社に知られたり、解雇されたりすることは基本的にありません。

  • 原則会社に通知されることはない:裁判所や弁護士から、あなたの自己破産について会社に連絡がいくことは原則ありません。
  • 解雇理由にはならない:自己破産したことだけを理由に従業員を解雇することは、不当解雇にあたり、法律上許されません。
  • 給料は通常通り支払われる:雇用契約は継続されるため、給料が支払われなくなることもありません。(ただし、給与差押えを受けている場合は別の対応が必要です)

これは、たとえ社長があなたの親であったとしても、法的には「会社」と「個人」は別人格として扱われるためです。

家族経営の会社だからこそ注意すべき「4つのポイント」

ただし、家族経営の会社の場合、一般的な会社とは異なる、以下のような特別な関係性がある場合があります。これらの点については、特に注意が必要です。

① 会社から借金をしている場合

会社の福利厚生などで、従業員貸付制度を利用しているケースです。この場合、会社はあなたにとって「債権者」の一人となります。したがって、自己破産の手続きでは、会社を債権者として裁判所に届け出る義務があります。当然、会社に自己破産の事実が知られることになります。

この会社からの借金も、自己破産によって免責の対象となりますが、会社にだけ優先して返済する行為は「偏頗弁済」という禁止行為にあたるため、絶対におやめください。

② あなたが会社の「役員」である場合

単なる従業員ではなく、あなたが会社の取締役や監査役といった「役員」である場合、話は大きく変わります。会社と役員の関係は、法律上「委任契約」とされており、民法の規定により、役員が自己破産をすると、その委任契約は一旦終了し、役員の地位から退任することになります。

ただし、自己破産をした人が役員になれないという法律(欠格事由)はありません。そのため、退任後、株主総会(ご家族が株主であることが多いでしょう)の決議で、再び取締役に就任(再任)することは可能です。

③ 会社や経営者である親族が、あなたの借金の保証人になっている場合

あなたの個人的な借金(銀行からの借入など)について、会社や社長である親が連帯保証人になっているケースです。この場合、あなたが自己破産をすると、債権者は保証人である会社や親に対し、残債務の一括返済を求めてきます。これにより、会社の経営に深刻な影響が及ぶ可能性があるため、極めて慎重な対応が必要です。

④ 破産管財人による調査が入る可能性

家族経営の会社の場合、破産管財人は、あなたと会社の間に不透明なお金の流れがないかを慎重に調査する傾向があります。例えば、

  • 給料が相場より不当に高く設定されていないか
  • 会社のお金が個人的に流用されていないか(実質的な借金ではないか)

といった点です。場合によっては、会社の帳簿や給与台帳の提出を求められることもあります。この際は、誠実な協力が不可欠です。

家族への打ち明け方とタイミング

上記のような特別な事情がある場合、経営者であるご家族に自己破産の事実を話さずに手続きを進めることは不可能です。最も良いタイミングは、あなたが弁護士に相談し、法的な状況と具体的な見通しを整理してからです。専門家である弁護士から、会社への影響が限定的であることや、取るべき対策を具体的に説明してもらうことで、ご家族も冷静に状況を受け入れやすくなります。


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