「夫が自己破産をすることになりました。私が結婚前から持っていた貯金や、私の給料で買った車まで、差し押さえられてしまうのでしょうか?」

ご夫婦の一方が自己破産をする際、もう一方の配偶者の方がこのような不安を抱くのは当然のことです。家族として生活を共にしている以上、自分の財産にも影響が及ぶのではないかと心配になるでしょう。

結論から申し上げますと、日本の法律では「夫婦別産制」が採用されているため、夫(妻)が自己破産をしても、配偶者であるあなた固有の財産が没収されることは原則としてありません。ただし、「これは本当に配偶者固有の財産なのか」という点が、手続きにおいて厳しくチェックされます。

この記事では、夫婦の財産に関する基本ルールと、配偶者の財産であっても処分の対象となる例外的なケースについて、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。

日本の大原則「夫婦別産制」とは?

日本の民法では、夫婦の財産について「夫婦別産制」という考え方を採用しています。これは、夫婦の一方が婚姻前から所有する財産や、婚姻中であっても自己の名(収入)で得た財産は、その個人の「特有財産」である、というルールです。

したがって、以下のような財産は、たとえ配偶者が自己破産をしても、あなたの特有財産として守られ、処分の対象とはなりません。

  • あなたが結婚前から持っていた預貯金
  • あなたが相続した遺産(不動産や預貯金など)
  • あなたの給料やボーナスを元手にした預貯金
  • あなたがご自身の収入で購入した自動車や貴金属など

自己破産は、あくまで申立てをした個人の財産のみを対象とする手続きなのです。

要注意!配偶者の財産でも「実質的に破産者の財産」と見なされるケース

「自分名義の財産だから安心」とは一概に言えない、注意すべき例外的なケースが存在します。破産手続きでは、財産の名義だけでなく、その「実質」が問われるからです。

① 名義だけを配偶者に移した財産(財産隠し)

自己破産を前に、処分を免れる目的で、破産者本人の財産(不動産、自動車、預貯金など)の名義を配偶者に変更する行為は、典型的な「財産隠し」です。これは絶対にやってはいけません。破産管財人が就任すれば、過去のお金の流れは徹底的に調査され、必ず発覚します。発覚した場合、その名義変更は無効とされ(否認権の行使)、財産は没収されます。さらに、免責が許可されない、詐欺破産罪に問われるなど、極めて重いペナルティが科せられます。

② 破産者の収入から形成された配偶者名義の財産

これは判断が難しいケースです。例えば、夫の収入のみで家計を立てており、妻が専業主婦であるとします。夫が生活費として渡したお金の中から、妻がやりくりして自分名義の口座に貯めた「へそくり」などがこれにあたります。

この場合、名義は妻のものであっても、その原資は夫の収入であるため、実質的には「夫の財産」であると判断され、処分の対象となる可能性があります。ただし、妻の家事労働による貢献なども考慮されるため、一概には言えません。金額や形成された経緯など、個別の事情に応じた専門的な判断が必要となります。

③ 夫婦の共有名義の財産(持ち家など)

夫婦のペアローンなどで購入した共有名義の不動産がある場合、処分の対象となるのは破産する方の「持分」のみです。しかし、現実的には、持分のみを買い取る第三者はほとんどいないため、破産管財人や他の共有者との協議の結果、不動産全体を売却せざるを得なくなるケースが大半です。

配偶者が「保証人」になっている場合は全く別の問題

財産の処分とは別に、最も注意すべきなのが、配偶者が破産者の借金の「連帯保証人」になっているケースです。この場合、破産者本人の支払義務は免除されても、債権者は保証人である配偶者に対し、残債務全額の一括返済を請求してきます。これにより、配偶者自身も債務整理を検討せざるを得なくなるため、極めて深刻な影響が及びます。

夫婦間の財産の問題は、感情的な対立にも繋がりやすいデリケートな問題です。正しい法律知識に基づき、冷静に対処するためにも、まずは弁護士にご相談ください。


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①1972年創立、所属弁護士数約100名の実績と経験

1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの破産・債務整理案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、ギャンブルや浪費が原因の借金等の困難事情でも最適な解決策をご提案します。

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③ 報酬分割支払前でも速やかな対応

多くの法律事務所では、報酬支払後に手続を行いますが、当事務所では、報酬支払い前でも内部審査で問題が無ければ速やかに手続を進めます。


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