「夫婦のペアローンで購入したマンションがある…」
「親から兄弟で相続した実家が、共有名義になっている…」

ご家族やご親族と不動産を共有名義で所有している場合に、共有者の一人が自己破産をすると、その不動産はどうなってしまうのでしょうか。「他の共有者に迷惑をかけてしまうのでは」「家全体を取り上げられてしまうのでは」と、大きな不安を感じていらっしゃると思います。

結論として、自己破産の手続きで処分の対象となるのは、あなたの「持分(もちぶん)」のみです。しかし、現実的には、あなたの持分が売却されることで、結果として不動産全体を手放さざるを得なくなるケースがほとんどです。

この記事では、共有名義不動産がある場合の自己破産手続きの具体的な流れと、なぜ家全体を失うリスクが高いのか、その法的な仕組みについて税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。

自己破産で処分されるのは、あなたの「持分」のみ

不動産を複数人で所有している状態を「共有名義」といい、それぞれの所有権の割合を「持分」と呼びます。例えば、夫婦で資金を出し合って購入したマンションであれば、「夫の持分2分の1、妻の持分2分の1」といった形で登記されています。

自己破産の手続きでは、破産する方の財産のみが処分の対象となります。したがって、あなたが自己破産をした場合、破産管財人が処分できるのは、あなたの「持分」のみです。他の共有者(ご家族など)の持分が、あなたの自己破産によって直接処分されることはありません。

なぜ「持分」の売却が「家全体」の売却に繋がるのか?

「自分の持分だけが処分されるなら、他の家族は住み続けられるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、現実はそう簡単ではありません。以下の流れをたどることで、最終的に家全体が売却されるリスクが極めて高くなります。

  1. 破産管財人が他の共有者に「持分の買い取り」を打診する
    まず、破産管財人は、他の共有者(例えば、あなたの配偶者)に対して、「破産するあなたの持分を買い取りませんか?」と交渉を持ちかけます。もし共有者が買い取ることができれば、家の所有権は完全に共有者のものとなり、あなたは家賃を支払うなどして住み続けることができるかもしれません。
  2. 共有者全員での「任意売却」を提案される
    共有者が持分を買い取れない場合、次に管財人は「共有者全員で協力して、不動産全体を市場で売却しませんか?」と提案します。不動産は、持分のみで売るよりも、全体で売却した方が高く売れるからです。売却代金は、持分に応じて分配されます。
  3. あなたの「持分のみ」が第三者に売却される
    他の共有者が①も②も拒否した場合、管財人はあなたの持分だけを売却せざるを得ません。しかし、家族が住む家の「持分2分の1」だけを欲しがる一般の買い手はまずいません。そのため、持分は専門の不動産業者などに安価で売却される可能性があります。
  4. 持分を買い取った業者が「共有物分割請求」を行う
    ここからが最も深刻な事態です。あなたの持分を買い取った不動産業者は、他の共有者に対し、「共有物分割請求訴訟」という裁判を起こします。この裁判では、最終的に裁判所の命令によって、不動産全体が強制的に競売(オークション)にかけられ、その売却代金を持分に応じて分けるという判決が下されることがほとんどです。

このように、どの段階をたどっても、最終的には家全体が第三者の手に渡り、あなたはもとより、他の共有者も家に住み続けることができなくなる可能性が非常に高いのです。

なお、価値が無いことが明らかな不動産の場合は、財団から放棄されることにより、売却されないという結末もあり得ます。

共有名義不動産と住宅ローン

住宅ローンが残っている場合は、さらに問題が複雑になります。

  • ペアローンの場合:あなたが自己破産しても、共有者のローン返済義務はなくなりません。しかし、家は売却されてしまうため、共有者は「家がないのに、自分のローンだけが残る」という最悪の事態に陥ります。
  • 連帯債務・連帯保証の場合:あなたが自己破産で免責されると、残ったローン全額が、連帯債務者や連帯保証人である共有者に一括で請求されます。

いずれにせよ、他の共有者に極めて大きな経済的負担を強いることになります。

家を守るための選択肢は「個人再生」

共有名義の家をどうしても守りたい場合、自己破産は適切な手続きではないかもしれません。その場合に検討すべきなのが「個人再生」です。「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅ローンはそのまま支払い続け、他の借金だけを大幅に減額することで、家を手放さずに済む可能性があります。共有者も一緒に個人再生を行うなど、ご家族全体で最適な解決策を考える必要があります。


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