借金100万円での自己破産は妥当か?費用・デメリット
「借金が100万円あるが、返済が苦しい。この金額で自己破産をすることはできるのか?」
「100万円程度の借金で自己破産をすると、かえって損になるのではないか?」
このようなお悩みは横須賀・逗子・三浦エリアのお客様からもよく相談されます。借金の悩みは金額の大小ではありませんが、いざ自己破産という強力な手続きを選ぶとなると、その金額が妥当なのか迷われる方は少なくありません。
結論から言えば、借金100万円でも自己破産の申立ては「可能」です。しかし、それが「妥当」かどうかは、費用やデメリットを他の解決策と比較して慎重に判断する必要があります。
この記事では、借金100万円で自己破産を検討する際の基準、費用倒れのリスク、そして「任意整理」という有力な選択肢について、税理士・司法書士有資格の弁護士が分かりやすく解説します。
借金100万円でも自己破産は「可能」
まず、自己破産の手続きが開始されるための法律上の要件(破産法第15条)は、借金の「金額」ではなく、その人が「支払不能」の状態にあることです。
「支払不能」とは、その人の収入、財産、信用(新たに借り入れできるか)のすべてを考慮しても、客観的に借金を一般的・継続的に返済していくことができない状態を指します。
したがって、借金が100万円であっても、以下のような状況であれば「支払不能」と認められ、自己破産の申立ては可能です。
- 病気や失業で収入が全くない、または生活保護基準を下回っている
- 収入(例:手取り13万円)から家賃や最低限の生活費を引くと、返済に充てるお金が残らない
逆に、借金が100万円でも、十分な収入や預貯金がある場合は「支払不能」とは認められず、申立てはできません。
問題は「妥当かどうか」:借金100万円で破産するデメリット
法律上「可能」であることと、その選択が「妥当(賢明)」であるかは別問題です。借金額が100万円の場合、自己破産を選ぶことには、以下の2つの大きな懸念点があります。
1. 費用倒れ(コスト倒れ)のリスク
自己破産は無料ではできません。裁判所に納める実費のほか、弁護士報酬が必要です。
- 弁護士報酬:約30万円~50万円程度が相場
- 裁判所費用(実費):
- 同時廃止(財産がない場合):約1万円~3万円
- 管財事件(財産がある・借金原因に問題がある場合):約20万円~(予納金)
最も簡易な「同時廃止」手続で進んだとしても、総額で30万円以上の費用がかかることが一般的です。100万円の借金をゼロにするために30万円以上の費用をかけるのは、経済的なメリットが薄い(費用倒れ)と感じられるかもしれません。
もし借金の原因がギャンブルや浪費であった場合、調査のために「管財事件」となり、裁判所費用(予納金)が最低20万円追加で必要になる可能性が高くなります。この場合、総額50万円以上の費用がかかることもあり、免除される借金額の半分が費用に消えてしまう計算になります。
2. デメリットの重さは借金額に関係ない
自己破産をすると、借金額が100万円であろうと1,000万円であろうと、以下のデメリットは等しく発生します。
- 信用情報機関(ブラックリスト)に約5年~7年登録され、ローンやカードが作れない
- 価値のある財産(家、車、高額な保険など)は処分される
- 手続き中、警備員や保険外交員などの一定の職業に就けなくなる(資格制限)
- 国の広報誌である「官報」に氏名・住所が掲載される
100万円の借金のために、これらの重いデメリットを受け入れることが果たして妥当かどうかは、慎重に考える必要があります。
借金100万円なら「任意整理」が最適なケースが多い
もし、あなたに一定の安定した収入(パート・アルバイトでも可)があるのであれば、自己破産よりも「任意整理(にんいせいり)」が最適な解決策となる可能性が非常に高いです。
任意整理とは、弁護士が債権者(貸金業者)と交渉し、将来発生する利息や遅延損害金をカットしてもらい、残った元本だけを3年~5年(36回~60回)の分割で返済していく手続きです。
仮に借金(元本)が100万円だった場合、返済シミュレーションは以下のようになります。
- 3年(36回)で返済する場合:
100万円 ÷ 36回 = 月々 約27,800円 - 5年(60回)で返済する場合:
100万円 ÷ 60回 = 月々 約16,700円
任意整理は裁判所を通さないため、自己破産のような財産処分や資格制限、官報掲載といったデメリットがありません。(※信用情報には登録されることがあります)
もし月々2万円~3万円程度の金額であれば捻出できるという方にとっては、デメリットを最小限に抑えて借金を整理できる、非常に有効な手段です。
(参考)借金100万円で「個人再生」は不向き
債務整理には「個人再生」という手続きもありますが、これは借金を大幅に(例:5分の1に)圧縮する手続きです。しかし、個人再生では最低でも100万円は返済しなければならないというルール(最低弁済額)があるため、元本が100万円のケースでは減額のメリットが全くなく、適していません。
100万円でも自己破産が妥当なケースとは?
では、どのような場合に借金100万円でも自己破産が妥当(推奨される)のでしょうか。それは、任意整理で求められる月々1万7千円~2万8千円程度の返済すら、捻出することが困難な(=支払不能な)ケースです。
- 重い病気や障害、高齢などで働くことができず、今後も収入回復の見込みがない
- 収入はあるが、家賃や医療費などを引くと手元に1万円も残らない
このような状況では、任意整理で和解しても返済が破綻するのは目に見えています。この場合は、たとえ費用倒れのリスクを考慮しても、自己破産によって支払い義務をゼロにし、生活保護の申請なども視野に入れながら、生活そのものを立て直すことを最優先すべきです。
まとめ
借金100万円での自己破産は、法律上「可能」ですが、費用倒れのリスクやデメリットの重さを考えると、必ずしも「妥当」とは言えません。
まずは、「任意整理」で月々2万円~3万円程度の分割返済が可能かどうかを検討するのが第一選択となります。それが可能であれば、自己破産の重いデメリットを回避して解決できる可能性が高いです。
もし、その返済すら困難な「支払不能」の状態であれば、自己破産が唯一の解決策となります。
ご自身の状況でどの手続きが最適なのか(デメリットが最も少ないか)を判断するのは簡単ではありません。おひとりで悩まず、まずは専門家である弁護士にご相談ください。
当事務所は、皆様の複雑な破産・債務整理問題を解決するために、他にはない強みを持っています。
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1972年の創立以来、半世紀にわたり数多くの破産・債務整理案件を手掛けてまいりました。約100名の弁護士が所属しており、それぞれの事案で蓄積された豊富な判例知識と実務経験を基に、ギャンブルや浪費が原因の借金等の困難事情でも最適な解決策をご提案します。
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広島大学(夜間主)で、昼に仕事をして学費と生活費を稼ぎつつ、大学在学中に司法書士試験に合格。相続事件では、弁護士・税理士・司法書士の各専門分野における知識に基づいて、多角的な視点から依頼者の最善となるような解決を目指すことを信念としています。
広島大学法科大学院卒業
平成21年 司法書士試験合格
令和3年4月 横須賀支部後見等対策委員会委員
令和5年2月 葉山町固定資産評価審査委員会委員
令和6年10月 三浦市情報公開審査会委員
令和6年10月 三浦市個人情報保護審査会委員
令和7年1月 神奈川県弁護士会横須賀支部役員幹事
令和7年3月 神奈川県弁護士会常議員


